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第109話
高校ではもう少し真面目にやろうと決めた。爺さんが喜ぶなら勉強も頑張ろうと。
荒れた毎日で発散しきった怒りの後にやってきたのは、そんな感情だった。
真幸も躊躇いながらウリをやめて、バイトでもすると言い出した。
だから俺に何もやれなくなるけど、と不安そうな表情をしたから「何もいらない」と正直に言った。
「何もいらないから、一緒に生きていこう。お前とならきっと楽しいからって、そう言ったんだ」
あの時、確かに俺達は幸せだった。
遠回りをしながら、普通とは違う生き方だったけれど少しずつ少しずつ、大人になっていった。
「皐月さんは、真幸さんが好きだったの?」
「……恋愛感情って意味なら違うな。真幸は兄弟とか、家族とか、そういう意味で好きだった。真幸もそうだと思ってた」
「……違ったの?」
千鶴が不安気に俺を見る。俺は何と返せばいいかわからずに、ただ千鶴に触れるだけのキスをした。
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