109 / 191

第109話

高校ではもう少し真面目にやろうと決めた。爺さんが喜ぶなら勉強も頑張ろうと。 荒れた毎日で発散しきった怒りの後にやってきたのは、そんな感情だった。 真幸も躊躇いながらウリをやめて、バイトでもすると言い出した。 だから俺に何もやれなくなるけど、と不安そうな表情をしたから「何もいらない」と正直に言った。 「何もいらないから、一緒に生きていこう。お前とならきっと楽しいからって、そう言ったんだ」 あの時、確かに俺達は幸せだった。 遠回りをしながら、普通とは違う生き方だったけれど少しずつ少しずつ、大人になっていった。 「皐月さんは、真幸さんが好きだったの?」 「……恋愛感情って意味なら違うな。真幸は兄弟とか、家族とか、そういう意味で好きだった。真幸もそうだと思ってた」 「……違ったの?」 千鶴が不安気に俺を見る。俺は何と返せばいいかわからずに、ただ千鶴に触れるだけのキスをした。

ともだちにシェアしよう!