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第110話
「中学を卒業した春休みに、真幸の母親が再婚相手を連れてやって来た」
そこそこ大きな会社の役員をやってる再婚相手は、真幸を引き取りたいと言ってきた。
母親も身綺麗になって、今まで何度か見た事があったけれど、その時より若くなったような気がした。
優しい人で、収入も安定していて、引き取り手としては申し分なかった。それでも過去の事があるから、直ぐにどうぞって訳にはいかない。
二人は春休みの間、何度も施設にやって来て真幸と沢山話をした。
最初は過去の事を怒っていた真幸も、何度も会ううちに「今度こそは」と思うようになっていった。
「ある日の夜中、真幸が思いつめた顔で寝てた俺を起こして……」
少し寝ぼけてる俺に抱きついてきて、「抱いてくれ」と縋ってきた。
俺は動揺を必死で隠した。
いつか、真幸がそう言ってくるような気はずっと前からしていた。
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