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第111話
真幸は成長期真っ只中で俺よりも背が高くて力だって俺より強かった。喧嘩だって負け知らずで、その辺の不良に一目置かれるような存在になっていた。
そんな真幸が小さい子供みたいに震えていた。
どんな事があっても平気そうな顔をしていた真幸が初めて見せた弱い部分。
これで引き取られたらもう二度と会えなくなる気がして怖いと、真幸は泣いた。
今までとは違う、しっかりした身元の人だ。もう虐待なんかされないで、大切にしてもらえるだろう。
それなのに真幸は俺と離れたくないと言う。どんな事があってもここに戻って来たらお前が「おかえり」と言ってくれたから、だから何だって耐えられたんだ……と。
俺はそこまで深く考えて言ったわけじゃない。ただ何となく言っただけだ。
だけど真幸はその言葉に救われていた。
「自分の言葉の重さをその時初めて考えた」
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