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第112話

何気ない一言が誰かの中にずっと残るのだと知った。好き勝手ヤリ放題だった真幸の中にも俺の言葉が残っていた。 「お前が好きだ。ずっとずっと好きだ。離れたくない。でももう一度だけ信じてみたい」 真幸がもう一度信じたいのは母親。 今度こそ家族で幸せになれると信じたいから、親の元に行くと決めたのだ。 「だから、最後に抱いてくれって……」 「それで、抱いたの?」 千鶴の問いに俺は首を横に振った。 千鶴は複雑な表情で俺の肩に額を乗せた。 「やろうと思えば抱けたと思う。けど、俺は真幸をそういう目で見てなかったし、同情なんかで抱いたりしたくなかった」 それは俺の、真幸に対しての誠意のつもりだった。抱く事は出来ないけど、真幸の事は大切だったから。 一緒に育った大切な家族だったから。

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