126 / 191
第126話
俺の書いた拙い話を根津は最後までちゃんと読んでくれた。そしてノートの最後のページに赤ペンで花丸を貰った。
初めて他人に自分を認めてもらった気がした。それから暫くは勉強して、バイトして、後の余った時間を創作に使った。
「告白はしなかったの?」
ローテーブルに頬杖をついた千鶴に、首を横に振って答えた。
「結婚してたし、子供もいて幸せそうだったからなー。好きになった時点で失恋してたんだよ」
「でも言わないと後悔しない?」
「言う前に俺の方が気持ちに整理がついてたんだよ。だから卒業する頃には恋愛感情はなくなってた」
根津を好きだという気持ちも、それが叶わない気持ちだと言う事も全部を創作の中に詰め込んだ。
あの頃の未成熟な想いはそうすることで片付けていた。その方法が俺には合っていた。
高校生活で自分の事を色々知った。
それだけで学校に通った甲斐があった。
ともだちにシェアしよう!