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第132話
真幸と居た時はよく喧嘩に巻き込まれたな、と目の前で一方的に殴られている様子を見ながら思った。
止めに入ろうとか、警察を呼ぼうとか、そんな気は全く起こらなかった。
巻き込まれたくないし、殴られる方にも原因があるんだろう。そんな風に考える俺は何処か感情が欠落してるんだ。
一頻り殴り終えて満足したのか、殴っていた方が路地からこちらに向かって歩いて来た。
早くその場を去らなきゃと思ったのに、路地から出てきた男の顔を見た瞬間、釘付けになってしまった。
忘れる訳が無い。
少し背が伸びて、がたいもしっかりして、あの頃より大人になっていたけれどその暗い目を忘れたりしない。
「真幸……」
俺を見た真幸は大きく目を見開いて、そしてさっきまで人を殴っていた手で口元を覆って一歩後ずさった。
久しぶりの再会にお互い動けないでいると、殴られていた方が腹を抑えながらフラフラと出てきた。
その姿を見て、俺は更に驚いた。
「……根津……」
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