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第133話

会いたいと思っていた二人が同時に現れて、混乱した。 何でこんな所にこの二人がいるんだ。 それにこの状態。一体何がどうなっているのか。 「……根津……」 とにかく根津の傷の手当てをしようと一歩前へ踏み出した瞬間、根津は慌てて逃げ出した。 追いかけようとすると、真幸に腕を掴まれその勢いのまま引き寄せられた。 「真幸っ!?」 俺だって仕事でかなり筋肉もついて力もあった筈なのに真幸はそんな俺を軽々と引き寄せたかと思うと、すっぽりと腕の中に収めてしまった。 「皐月……」 久々に聞いた真幸のあまりにも痛々しい声に俺は根津を追いかけるのを諦めて、暫く真幸の腕の中でじっと動かないでいた。 聞きたい事が沢山あった。 けれど何も言葉に出来なかった。 最後にお別れをした時に祈った、「幸せになれ」という思いは神様には届かなかったんだと、腕の中にいながら思っていた。

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