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第134話
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煙草に火をつけて一息つくと、スーツの胸ポケットから煙草を出してきた真幸が俺の煙草の火を使って自分の煙草に火をつける。
シガレットキス、って言うんだったっけな。
真幸の顔が近くまで寄ってきて、長い睫毛が影を落としていた。
あのまま帰るわけにもいかず、真幸をうちにまで連れて来た。
真幸は何も言わないで付いてきた。
一緒に施設で暮らしていた頃を思い出す。
よく爺さんに隠れて煙草を吸った。
煙草の匂いが部屋につかないように冬でも窓を全開にして。
今はもう窓を開ける必要がない。
俺も真幸も煙草を吸っても怒られない年齢になった。
二人分の紫煙が部屋を白くする。
冷蔵庫から出してきた缶ビールにはお互い手をつけなかった。
「元気にしてたのか?」
何から話せばいいか悩んで、結局当たり障りのない科白が出てきた。
真幸は口元だけで笑った。
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