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第138話
慣れてるなんて言うなよ。
慣れる訳ないだろ。
気付かないフリしてどんだけ傷付いていたのか、俺には計り知れない。
「母親にヤってるとこ見られてさ、もう最悪。俺が誘った事にされて、散々詰られて最後に一言、母親に言われたんだ」
――出て行け、お前なんて子供じゃない。
今まで信じてきたものが脆く崩れ去った瞬間だった。
使い切れないほど渡されていた小遣いという名の代償と携帯だけを持って、直ぐに家を出ていった。
不思議と寂しくはなかった。
やっと母親を裏切らなくて済むと思うと、ホッとした。
これでもう、何もなくなった。
「皐月に会いたいと思ってこの街に戻って来たけど、俺が会いに行けば爺さんも心配するだろうから行けなかった。暫くはネカフェに泊まって、久々に客探したりして稼いでさ」
「お前、馬鹿だろ……会いに来いよ……」
真幸を何時までも不幸にする大人達が許せなかった。それでも母親を許す真幸に苛立ちを隠せなかった。
俺にはわからない親子の絆に憤りを覚えた。
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