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第141話

堕ちていこうと思った。 真幸が幸せになれないのなら、このまま堕ちるとこまで一緒に堕ちていこうと。 あの日、幸せになれと祈った事が叶わないなら幸せになんかならなくていい。地獄まで一緒に付き合うつもりでいた。 それまで積み上げた物を全部手放した。 仕事も辞めて、小説も書くのをやめた。 定期的に顔を出していた施設にも行くのをやめ、毎日真幸と一緒にいた。 堕ちるのは簡単だった。 元々、何も持っていない俺が積み上げた物なんてたかが知れていた。 真幸について、借金回収の手伝いをしたり、ケツ持ちの店に来た厄介な客を懲らしめたり。 たまに真幸に連れられてキャバクラに行って飲んだり、その筋のお偉いさんを紹介されたり。 何の興味も持てずにただ何となく真幸の後ろを付いて回っていただけ。 それだけでも知らないうちに名前は売れていった。そのうち、そこら辺のチンピラは俺や真幸に敵わないと手を出してこなくなった。

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