154 / 191

第154話

いつか必要になる時が来るかもしれないからと、銀行へ行き千鶴名義の口座を作って貯金する事にした。 自分の通帳を初めて作った千鶴は嬉しかったのか、妙なテンションで小躍りしていた。 それまで稼いできた金は店のオーナーがきちんと管理していてくれたらしく、千鶴が辞めると告げた時も何も言わなかったらしい。 大金を手にして散々悩んでから俺の家に戻ってきた千鶴。 何を悩む必要があったのかと尋ねると、俺が本当に受け入れてくれるか不安だったと言った。 そんな不安も全部、俺が消してやろうと何度も千鶴の名前を呼びながら抱いた。 何度も好きだと囁いて、一緒に居ようと約束をした。 千鶴が戻って来てから一週間ほどして、河内が訪ねてきた。 相変わらず無表情で無口な河内は、自分も仕事を辞めて実家へ帰る事にしたと報告してくれた。 「今までありがとう」と河内が帰る時、千鶴が小さく呟いた。 河内は嬉しそうに笑顔を見せた。

ともだちにシェアしよう!