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第156話

*** そろそろバイトが終わる時間だな、と時計を見て思っていたら携帯が鳴った。 こんな時間に掛けてくるのは千鶴くらいだ。 案の定、ディスプレイには「千鶴」の文字。 通話ボタンを押して「もしもし」と言うと千鶴じゃない男の声で「皐月」と名前を呼ばれた。 背筋が凍った。ゾワゾワと鳥肌がたった。 なんで千鶴の携帯からアイツの声がするんだ。 「……千鶴は?」 動揺を悟られないように努めて冷静な声で訊ねた。 電話の相手は何も言わない。 「千鶴に手を出したら殺す」 荒んでた頃の冷酷で何の感情も持たない自分が顔を出す。 河内と一緒に千鶴を迎えに行った時にはまだ抑える事の出来た暗い過去の自分。 それが今、外に出たいと俺の中で蠢いている。 ――千鶴、お前にまだ話していない続きがあるんだ。 俺と真幸の依存と執着がその後どうなったのか。 施設と爺さんがどうなったのか。 それから……。

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