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第161話

「皐月……お前さ、もう俺から自由になれよ」 ある日、真幸がそう言った。 その日は真幸に久々に会った日だった。 真幸は最近ずっと忙しいと言っては単独で行動する事が多かった。 今考えたらそれは根津に拘束されていたからだったんだ。 会わない内に真幸は痩せこけていて、顔色も悪くて、それなのに目だけは血走っていた。 「何言ってんだ? お前に束縛された記憶はないけど?」 真幸の言葉を冗談にしたくて苦笑しながら返した言葉は酷く空回った。 真幸の気持ちに応える事も出来ないのに、真幸の傍を離れるつもりもなかった。 俺の方が真幸の自由を奪っていた。 「一緒に死ぬんだろ?」 俺はずっとそれを待っていた。 もう疲れたと、真幸が言ってくるのを。 そしたら俺は真幸と一緒に死のうと決めていた。 「……お前は馬鹿だ」 呟いた真幸の声は俺の耳には届かなかった。 その日からまた暫く真幸は忙しいと言って会えないまま、ダラダラと時間だけが過ぎていった。

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