162 / 191
第162話
今は使われていない廃墟になったビルの中をライターの火で灯しながら進んだ。
昔はここら辺の暴走族が根城にしてた廃墟は今はほとんど人は寄り付かなくなっていた。
かつてここでヤクの取り引きをしていた奴がいる。
組から少しずつ盗んで、カタギの人間に高額で売りつけ荒稼ぎをしていた。
その話を聞きつけた幹部が組のメンツを潰されたと怒り狂い、ソイツを捕まえて来いと俺に命令した。
いつもなら真幸と二人でやっていた仕事だったけれど、真幸とは連絡がつかず仕方なく一人でやる事にした。
この廃墟の一室を改装して寝泊まりしているという情報を得て、俺はその時もライターで足元を照らしながらここを歩いた。
まさかまたここに来る事になるなんて思いもしなかった。
もう二度とここには来たくなかった。
少し奥へ進むと扉が見えた。
扉の前まで行き、ライターを決してポケットに入れると扉を足で蹴って開けた。
ともだちにシェアしよう!