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第163話
そこまで広い部屋ではない。
うちの居間と仕事部屋を足したくらいの広さの部屋に柱が立っている。
「千鶴……」
後ろ手にロープで柱に縛り付けられ意識のない千鶴がクタリと座り込んでいるのが最初に目に入った。
「早かったな、皐月」
壁際の古びたソファーに座っていた根津がニヤリと笑った。
俺は何も言わずに千鶴の傍まで行くと、千鶴の息を確認した。
「眠らせただけだよ、何もしてない」
不気味に笑ったままの根津を睨みつけた。
初恋の相手をこんなに憎む日が来るとは高校生の俺は知らない。
黙ったまま千鶴のロープを外そうとするけれど、きつく縛られていてなかなか上手くいかない。
「もうそろそろ温い場所は飽きただろ?」
なかなか緩められないロープと、根津の声にイライラが募る。
今すぐ根津を殴りつけたい。
でもまずは千鶴の安全を確保しなければ。
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