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第169話
爺さんは亡くなる前に俺が書き溜めたノートを出版社に持って行っていた。
原稿用紙でも何でもない、普通のノートを持ち込まれて出版社の方も困ったと言う。
けれど爺さんがあまりに必死に「目を通してほしい」と言うからとりあえず一冊読む事にした。
荒削りでまだまだ改善点はあるけれど、うちで小説を書いてみないか。
電話の主は俺にそう言った。
信じられなかった。小説家になるなんて考えてもみなかった。
けれどこの機会を逃してはいけないと思った。
きっと爺さんの最後の贈り物だと感じた俺は、それを機に裏の世界から足を洗って真面目に生きようと決めた。
そう簡単に抜けられるものではなかったけれど、元々は下っ端だったし何より真幸が口添えをしてくれたお陰で俺は割とすんなりその世界から離脱する事が出来た。
真幸はその時はとある事務所の幹部候補になっていたから、真幸が俺を監視する条件で辞めることが出来たのだ。
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