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第172話
一度、家に帰り出来たばかりの小説を持って真幸の元に戻った。
目が覚めれば薬を抜くために暫く辛い状態が続く。それを見守る勇気は俺にはなかった。
枕元に本を置くと、ボサボサに伸びたままだった髪をワックスでセットして夜の街へ出た。
根津を探そうと考えていた。
組の連中も根津を探しているみたいだが、それより先に見つけてやろうとしていた。
真幸をあんなにした事を後悔させてやる。
俺が根津を殺してやる。
絶対に許さない。
俺が好きだった先生はもうとっくの昔に死んでしまったんだ。
だからあれは先生なんかじゃない。別人だ。
根津を殺せば真幸も喜んでくれる。
そうしたら次は真幸が望むように生きよう。真幸の気持ちを受け入れよう。
そして一緒に静かに死のう。
真っ当に生きるなんて、この世に生を受けた時から無理だったんだ。
だから捨てられたんだ。
俺は誰も幸せになんか出来ない。
なら、せめて真幸の望むようにしてやるのが正解なんだと思ったんだ。
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