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第178話

千鶴は危うい存在だった。 今にも消えてなくなりそうだった。 それまで感じた事のない感情が湧いてくるのを見ないふりして接していた。 千鶴みたいに色々あって体を売る仕事をしている人間は沢山見てきたのに。 身体中、傷だらけにされた奴だって山ほど見てきたのに。 俺はそんな中から千鶴を選んだ。 もしかしたら根津が狙ってくるかもしれないと思いながら、それでも千鶴を傍に置きたいと思ってしまった。 俺に出会わなければ千鶴は今もウリを続けていて、こんな風に根津に拉致られる事もなかったはずだ。 あのままウリで痛い目に合い続けるのと、拉致られるのとではどっちがマシだっただろう。 どちらも嫌だから、根津には大人しくしていて欲しかった。 俺がもっと早く手を打っていれば千鶴をこんな目に合わせずに済んだのに。 つくづくダメな人間だと思う。 それでも千鶴だけは助け出さなければ。 俺が例えどうなろうとも。

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