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第180話

誰かに許されたくてずっと藻掻いてきたのだから、もう苦しんでほしくない。 自分自身の幸せを探してほしい。 俺に執着する事で自分を悪者にする事をやめて、教師だった頃のようにヒーローに戻ってほしい。 もう充分、底を見たじゃないか。 そろそろ上に上がって来て陽の当たる場所に出てきてくれ。 罪も、罰も、あんたにはもう必要ない。 「俺は先生に出逢えて良かったって、今でも思ってる」 千鶴を抱き抱えてその場を去ろうと立ち上がる。 根津はそれを邪魔もせずにただ見ていた。 入ってきた場所から出る時、根津が俺の名前を呼んだ。 俺は立ち止まって、顔だけ根津の方に向けた。 「……今もまだ先生って呼んでくれるんだな、お前は」 「だって、俺にとっては先生はずっと先生だから」 「……そうか」 それきり俯いてしまった根津を置いて、千鶴を抱えたまま元来た道を戻った。 乗ってきたバイクじゃ眠る千鶴を乗せられないから、大きな通りに出てタクシーを拾って俺と千鶴は帰路に着いた。

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