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第181話
自分が生きてきて犯した罪は沢山ある。
時に言葉で、時に力で人を傷付けてきた。
自分が与えて貰えなかった物を持っている人間に嫉妬し、八つ当たり、壊してやろうと思っていた。
本当はもう与えられていたのに、醜く穢れた心がそれを見ないで無視し続けた。
そうして重ねた嘘と罪と惰性は真っ黒な闇になって、病みになって。
抜け出したその先には同じような深みにいた人間を見つけた。
あの日、無視してしまえばそれで終わっていたのに俺は手を伸ばした。
その手に傷だらけの手を重ねた千鶴を、その癒えない傷ごと愛そうと思った。
千鶴の何かが俺の琴線に触れた。
それが何かはわからない。
だけど、間違いじゃないと思えた。
決して許されない罪を両手に抱えたままの俺と、癒える事のないかさぶただらけの心の千鶴と。
それから猫が三匹。
そんな二人と三匹の暮らしがやっと始まる。
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