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第185話

俺が捨てられていたのは丁度この場所だったらしい。 何の思い入れもない。だって新生児の記憶なんてないから。 インターフォンを鳴らすと中からバタバタと何人かの足音が聞こえてきた。 ゆっくりと扉が開いて、その隙間から子供達が顔を覗かせる。 「やっぱりサツキだっ!」 「やっぱり!」 サツキだ、やっぱりだ、と子供達が騒ぐ中、千鶴に目配せして一緒に中に入った。 俺が育った家。 施設は今もほかの人が引き継いで運営していた。 中は何度か古くなった箇所を直しているから、当時の面影はあまりない。 それでも匂いや、太陽の光が差し込む加減なんかを感じると懐かしくなる。 足元に群がる子供達を引き連れて職員室まで行く。 昔いた職員はもうそんなに残ってないけれど、毎年来ているから新しい職員にも顔は知られている。 そのうちの一人が似合わないエプロンを付けて近寄ってきた。

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