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1-1:午後0時の戦場 (4)

「ポイントカードはお持ちですか?」 宮下さんのマニュアル通りの言葉に、神崎さんは露骨に顔をしかめた。 どうやらまたポイントカードを忘れてしまったようだ。 週3で来ているのだから相当なポイントが溜まっているはずなのに、もったいない。 「忘れました」 「後付けはできないのでご了承ください」 「わかりまし……あ、お前持ってる?」 「いんや?」 「あ、大丈夫です」 「かしこまりました」 それからどっちが支払うかで押し問答する2人をなんとなく微笑ましく思いつつ、熱々になったカルボナーラを袋に入れる。 同僚さんにこれまた熱々になったナポリタンを差し出す宮下さんの横から、身を乗り出した。 「フォークでよろしいですか?」 「できればお箸を一膳」 「かしこまりました」 もう何度も繰り返して答えのわかりきった質問をしながら、お手拭きをひとつ取り袋に入れようとする。 その様子を、神崎さんがじっと見つめている。 自分の手が震えていないか意識すればするほど、ビニールがこすれてカサカサと音を立てた。 「お待たせしました。熱くなっておりますので、お気をつけてお持ちくださいませ」 神崎さんがカルボナーラをしっかりと受け止める横で、同僚さんが宮下さんの差し出したナポリタンを受け取り、ふたりは示し合わせたかのように同時に一歩ずつレジから遠ざかっていった。 さっきの話の続きでもしているのか、2人の間には笑顔が絶えない。 一歩、また一歩。 あと三歩でも進めば陳列棚の陰になってその姿が見えなくなる、そんなところで、神崎さんが俺を振り返った。 「ありがとう」 ああ、やっぱりーーたまらない。

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