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1-1:午後0時の戦場 (9)

それから俺は、毎日、昼休みの行列の中に神崎さんの姿を探すようになった。 見つけて、見つめて、声を聞いて。 そんなことを繰り返したら、いろいろなことを知った。 神崎さんがこのコンビニに来るのは週に3日、月水金。 どうやら、火木は昼休み直前まで会議があるらしく、その流れで同僚と連れ立って外に食べに行くことが多いらしい。 そして、黒烏龍茶ばかり買っているのは、特に健康思考だからというわけではなく、ただ単にその味が好きだから。 週刊ジャプンの発売日には、朝起きてすぐ家の近くのコンビニに走って買いに行きそれを通勤中に読み切ったら、その日のうちに誰かほしい人に譲ることにしている。 なぜなら自分は読み終わった本は読み返さないタイプで、家に持ち帰っても捨てるだけだからもったいない、と言っているのを聞いた。 テレビドラマは見逃してしまうことが多くストーリーを追えなくなるから苦手で、でも大河ドラマだけは毎年欠かさず見ている。 朝は目覚まし時計を3個つけていて、そのうちのひとつは大学の入学祝いに親からもらった電波時計。 好きなタイプは幸せそうに飯を食うやつ、と目を輝かせていたこともあった。 いつも、会話の中に「彼女が」とか「嫁が」とか「妻が」とか「ハニーが」という言葉が出てこないか、ヒヤヒヤしていた。 一度「前のやつ」という言葉が出てきて心臓が固まったけれど、どうやらそれは本当に「前の」やつの話をしていただけで、今でも未練があるとか、交流があるとか、そういうことではないらしい。 って、だから俺は、いったい何をチェックしているんだ。

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