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1-1:午後0時の戦場 (10)
思えば、この間の『アイス爆食いの変』は単なるきっかけだっただけで、実はもうずっと前から、俺にとって神崎さんはほかの人たちとは何かが違う存在だったのかもしれない。
このコンビニに毎日来る人は何人もいる。
それでも、俺が名前を覚えていたのは神崎さんだけだった。
同じ会社の人間同士がすれ違うのだから、ほかの人たちだって、何度も名前で呼び合い呼ばれ合っている。
そして、俺もそれを何度も聞いていたはずだった。
それでも、今日神崎さんと一緒にレジにいた同僚さんの名前は、どうやっても思い出せなかった。
気付いてしまえば、至極単純なことだった。
でも、気付いてしまったら、辛かった。
男の俺にこんな風に想われてると知ったら、あの人はどう思うだろうか。
そもそも、あの人にとって俺はただのコンビニ店員で、ぼんやりした輪郭の中で蠢くたくさんの人間のひとりでしかないはずだ。
たとえ、この四年間、週に3回顔を合わせていたとしても。
俺たちの平行線は決して交わることはーーない。
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