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1-2:午後2時の邂逅 (5)
って、いやだから違うだろ、俺!
ああ、もう。
これじゃまるで恋する乙女じゃないか。
いやむしろ、ストーカーか?
でもここで出会ったのは偶然で、決して後をつけてきたとかそういうわけじゃないんだから、後ろめたく感じる必要はない。
ない、けれども。
やっぱり、見てしまう。
どれだけ脳内をクリームソーダについての考察でいっぱいにしようとしても、目が勝手に向かいに座る神崎さんを上から下まで不躾に見つめてしまう。
でもしょうがない。
もう、そう思うことにする。
だって、俺がこの人の私服姿を見るのは今日が初めてなのだから。
気づけば、今の俺が虫眼鏡だったら太陽光さえあれば神崎さんに穴が開けられるくらいには、じっと見つめていた。
ああ、こういうのを『穴が開くほど見つめる』って言うのか。
そんなどうでもいいことまで実感してしまう。
細身ジーンズが、長い足によく似合っている。
着ているのは普通の紺色のTシャツなのに、この人が着ているんだけでおしゃれに見える。
いつもはきちんと整えられている髪も、今は無造作に揺れていてーー…
本当に、少女漫画に出てきそうなこんな表現しか浮かばない。
おそらく漫画の世界では、こんな風に思いを巡らせながら主人公の女の子が憧れの人を見つめていると、ふと視線に気づいた彼が顔を上げ、目があったふたり、そこから愛が始まるのだーー…
だめだ、なんか今度はラブソングみたいになってきた。
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