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1-3:午後5時のアバンチュール (24)

いつの間にか自分から舌を伸ばしていた。 一瞬止まった口づけが、荒々しさを増して再開する。 これ以上溺れまいと握りしめていた拳が緩んでいく。 離れそうで離れない距離をもっと縮めたくて、背中に手を回した。 ピクンと強張った背中がゆっくりと動き、また首筋を舐められる。 思わず仰け反ると、すぐに手が伸びてきて後頭部を固定された。 あっという間に唇を探り当てられ、舌が絡み合う。 息を継ぐ間もない口付けに空気を求めて喘ぐと、ふと唇が離れた。 「ん、はぁっ……ぃひゃあっ!」 失った酸素を取り戻す前に、曖昧だった意識が一気に覚醒した。 もやのかかった視界の中で神崎さんが微笑んでいる。 その左手は俺の股間に伸びていた。 「硬くなってる」 「なっ……!?」 ズボン越しにでもわかるくらいに盛り上がったそこをゆるゆると撫でられて、腰が抜けそうになる。 ふるりと震えた俺を見下ろして、神崎さんは目を細めた。 ジジッと聞き慣れた音がして視線を落とすと、神崎さんの左手が俺のズボンのジッパーを下ろしている。 それを半分くらい下げたところで、その長い指を隙間から入り込ませた。 「ちょ、か、神崎さん!」 「いいから」 「な、何が……んっ」 神崎さんの手が優しくそれを包んだ。 その瞬間、何かが一気に全身を駆け巡る。 必死に漏れそうになる声を堪えた。 信じられない。 いったい何がどうしてしまったんだ。 キスだけでこんなにふやけてしまっている自分も。 嬉しそうに俺を握っている神崎さんも。 その表情(かお)に反応してまた硬くなってしまうのも。 すべてが信じられない。 「あっ、あっ、ぁっ……」 神崎さんの手が、優しく俺を撫でたあとゆっくりと上下に動き始めた。 乾いていたそこはすぐに潤い、いやらしい音を立て始める。 どうしてだ。 初めてじゃないのに。 自分が一番いいところを知っているはずなのに。 何かが違う。 全部が違う。 早くなる手の動きに合わせて腰が浮く。 絡みついてくる指が熱いのに冷たい。 呼吸が乱れる。 目を開けていられない。 震える。 こみ上げる。 堪えたいのに。 堪えられない。 もうーー出る!

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