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閑話:午後7時のランデブー (4)

ぐうううううぅぅぅぅっ。 エレベーターに乗り込んだ途端、また俺の腹の虫が鳴いた。 チラリと向かいに立つ佐藤くんを見ると、口元を押さえて全身を震わせている。 「……笑い堪えてるのバレてるからな」 「ご、ごめんなさいっ」 佐藤くんはプハッと噴き出すと、もう一度謝って表情を和らげた。 「どうせなら、今夜は神崎さんが食べたいもの食べに行きましょう」 「食べたいものか。そうだな……」 腹の音だけで佐藤くんを2回笑わせられるくらいには腹が減ってるけど、いざそう言われると思いつかな……ん、待てよ。 「お寿司!」 「お、寿司……?」 「今夜はお寿司を食べに行こう。と言っても、回るところだけど」 「は、あ」 「最近この近くに、回転寿司に見えるけど回転しない回転寿司屋ができたんだ」 「それってもはや回転寿司じゃないんじゃ……」 「なんと注文すると、新幹線がレールの上を走ってお寿司を運んできてくれる!」 「新幹線……?」 「佐藤くんはドクターイエローって知ってるか?」 「知ってます、けど……神崎さん」 「ぅおっ」 エレベーターの壁が柔らかくて良かった。 後頭部への衝撃が鈍くて安心した途端、唇に勢いよく何かがぶち当たってきた。 「んぅっ……んっ……」 な、なんだ。 急にどうしたんだ。 これはどう見繕っても『つい』してしまったキスじゃない。 なにが引き金になったんだ。 「ふぁ……っんぅ……」 無理やり舌で口をこじ開けられて、歯列をなぞられる。 さっき俺がキスした時は逃げ腰だったのに、人が変わってしまったみたいに激しく口付けされて、息を継ぐ暇もない。 目の前がチカチカする。 本当になんなんだ。 佐藤くんの行動はいつも唐突すぎてついていけない。 俺の手首を掴んで物理的に引き止めてきたり、勢いでキスしてきたり、恥ずかしげもなく頭を撫でてきたり……ああ、そうか。 たぶんこいつは、天然ものの肉食系男子だ。

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