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2-2:午後8時のさざ波 (7)

「佐藤くん」 「はぁっ……な、んですか」 なかなか整わない呼吸のまま見下ろすと、神崎さんが、べ、と舌を出した。 「ちょっ……!?」 トロリと糸を引く白濁を、神崎さんが舌で絡みとって飲み込む。 そしてひと言、まず、と零した。 ひどい。 やばい。 エロい……っ。 むくむくと復活しそうになる下半身を叱咤しながらズボンを直して、まだ膝立ちのままだった神崎さんに手を差し出す。 神崎さんは素直に捕まると、ゆっくりと立ち上がった。 今日もジーンズがよく似合うな。 それに長袖のボーターがかわいい……じゃなくて。 「か、神崎さん」 「ん?」 「その……俺は、しなくても、いいんですか」 「えっ、したいの?」 「そ、そういうことを言ってるんじゃなくて!その……いつも俺だけ気持ちよくなってていいのかな、って……」 「……ふぅん、気持ちいいんだ」 神崎さんがいかにも人の悪そうな表情(かお)で俺を見上げてくる。 反論したくて、でも何も言えない。 ああそうだよ、気持ちよすぎて泣けてくるくらいだこんちくしょう! 口を開いたらそんなことを叫んでしまいそうで、俺はただ視線を落とした。 「……神崎さんだって、それ」 「なに?」 「いいんですか、その……」 「あー……」 俺の指の先を見下ろして、神崎さんが決まり悪そうに顔をしかめる。

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