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2-2:午後8時のさざ波 (11)

ぷるっぷるだ。 ぷるっぷる。 「いただきます!」 「いただきます」 「ん……美味い!」 神崎さんが、ぷるっぷるの餡を箸でつまんでひとくち食べた。 それは最初(はな)から単独で食べるものじゃないし、そんな風に箸でひょいっと持ち上げられるようになるまで固めるものじゃない。 そう言いたいけれど、あまりにキラキラ輝く瞳を前に思わず言葉を飲み込んだ。 ブリの唐揚げのあんかけは、餡が予定以上にぷるっぷるになるというアクシデントを除けば、それなりの出来にはなったと思う。 そもそも味噌汁を作っている間に餡づくりを神崎さんに任せた俺が悪いと言われればそれまでだけど、まさか本当に片栗粉が固まるくらいであそこまで感動して、いつまでも火から降ろさずグルグルグルグルグルグル……するとは思わなかった。 おかげで見事なまでのぷるっぷるだ。 ゼリー化してしまってもはや餡かけじゃなくなってしまった気もするけれど……まあ、神崎さん本人が美味いと喜んでくれてるならいい……か? 「あー……美味くてムカつく」 「えっ、なんでですか」 「だって佐藤くんに胃袋を全力で掴まれてる気がする」 ため息を吐きながらソファの背に身を預け、神崎さんが悔しそうに箸の先っぽをがしがし噛んだ。 あ、口がへの字に曲がってる。 拗ねちゃったのか。 かわいい。 思わず頭を撫でると、じとーっと斜め下から睨まれた。 なんでこの人の瞳はいつも潤んでいるんだろう。 そんな顔で俺を見るなら、もっとほかのところも掴ませて欲し……って、何考えてんだ、俺!

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