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2-2:午後8時のさざ波 (16)

瞬間、目の裏が燃えるように熱くなる。 記憶の一番奥の扉のさらにそのまた向こう側に追いやったはずの光景が、一気にフラッシュバックする。 跪いて見上げてくる神崎さんの挑戦的な瞳。 その舌からもたらされる淡くもどかしい快感。 舐めとられる白い欲望。 思わず喉を鳴らすと、神崎さんが体を揺らしながらくつくつと笑った。 「なに思い出したんだよ。佐藤くんのスケベ」 「なっ……」 「あー、やっぱり今日はアイスなしでいけるな」 今度は無邪気に笑いながら、濡れた視線だけで俺をとらえてくる。 だからなんで、この人の瞳はいつもキラキラしてるんだ。 電気の光に反射してるだけなのに、キラキラキラキラキラキラと……ああもう! 本当に、心臓を鷲掴みにされて足掻くな諦めろって言われている気分だ。 もうこの際、神崎さんの憂さが晴れるっていうなら俺のことなんていくらでも好きにしてって言ってしまいたくな……あれ? 待てよ。 それって、神崎さんは俺のことを単なる憂さ晴らしの相手としか見ていない、ってこと、じゃないか? 端的に言うと……身体目当て? もしかして、神崎さんが絶対に俺に触れさせてくれないのは、それが原因? いやでも、あの時確かに付き合うってことになって、つまりそれって、俺は神崎さんと恋人同士ってことになって、だから、神崎さんも俺と恋人同士ってこと……になって、で、いいんだよな? え、なに、もしかして、そう思ってたのは俺だけで、違った……とか? 「佐藤くん?どうした?」 「へっ!?あ、な、なんでもない……です」 「……ふぅん?」 ……あ。 やばい。 まただ。 またーーもやもやしてきた。

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