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2-3:午後7時のベーゼ (8)

呆然と俺を見ていた神崎さんの唇が小さく動いた。 「……そ」 「そ?」 「そんなに、好き好き、言うなよ」 「しょうがないです。四年分溜まってるんで、いっぱい言わなきゃ」 神崎さんはまた真っ赤になってしまった。 正座したまま、俯いて全身を震わせている。 さっき俺を押し倒していた時とは別人のようだ。 神崎さんはきっと今、四年遅れで俺を追いかけている。 だから自分の気持ちが信じられなくて、すごく不安で、葛藤しているんだ。 頭を撫でると、柔らかい髪が指に絡みついてきた。 神崎さんはピクリと肩をいからせて、でもされるがままになっている。 引き裂かれていた心の欠片が集まって、ひとつになっていく。 あたたかい。 かわいい。 好きだ。 愛しい。 触れたい。 「神崎さん」 「……」 「顔、上げてください」 「……やだ」 「えっ」 「顔上げたら、キス、するだろ」 「そうですね」 「そしたらまた……」 「ムラムラしますか?」 「……うん、たぶん」 「いいですよ」 「えっ……?」 「だってほら」 「あ……」 俺だって男だ。 好きな人がこんなに近くにいて、こんなにかわいいんだから、興奮するに決まってる。 「神崎さんがかわいいからです」 「なっ……んむぅっ」 ボサボサに乱れた髪を引っ掴んで、唇を合わせた。 アーモンド型の綺麗な瞳がまん丸になる。 頑な唇を舌でそっとなぞったら、躊躇いがちに開かれた。 どちらからともなく絡ませて、追いかけ合う。 追いついては逃げられ、逃げては追いつかれる。 唾液が零れるのも無視して、ただ貪りあう。 舌先を吸うと、一瞬驚いたように離れていって、でもすぐにやり返される。 いつの間にか俺の両手は神崎さんの背中に回り、神崎さんの両手は俺の服をしっかりと掴んでいる。 伝わってくる小刻みな震えがいじらしい。 本能が導くまま深い口付けを繰り返し、ゆっくりと距離を取り戻した時にはすっかり息が上がっていた。 「はぁっ……はぁっ……」 「は、ぁっ、神崎さん、大丈夫ですか?」 「はぁっ……言っとく、けど」 「え?」 「今のは、ぜっ……たいに佐藤くんが悪いんだからな」 「え?あ、うわぁっ!?」 あ、よく見ると天井にうっすらと模様が……ひぁっ!

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