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2-3:午後7時のベーゼ (13)
すべてを吐き出した身体が、俺の意思を無視して震える。
酸素を求めて肩が上下した。
「……やっぱりまずい」
白くふやける視界の中で、神崎さんが淡く微笑んでいる。
心地よい疲労感が全身を包んだ。
「大丈夫?水でも……」
「好きです」
神崎さんの潤んだ瞳が俺を捉えた。
そっと頬に指を伸ばすと、ピクリと肩が強張る。
一度瞼に遮られて、でもすぐにまたその瞳に俺が映った。
「俺、神崎さんが好きです」
「……うん、知ってる」
頬をなぞる右手が、繊細な左手に捕まる。
交わる視線。
そして俺たちは、口づけを交わした。
fin
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