94 / 492

2-3:午後7時のベーゼ (13)

すべてを吐き出した身体が、俺の意思を無視して震える。 酸素を求めて肩が上下した。 「……やっぱりまずい」 白くふやける視界の中で、神崎さんが淡く微笑んでいる。 心地よい疲労感が全身を包んだ。 「大丈夫?水でも……」 「好きです」 神崎さんの潤んだ瞳が俺を捉えた。 そっと頬に指を伸ばすと、ピクリと肩が強張る。 一度瞼に遮られて、でもすぐにまたその瞳に俺が映った。 「俺、神崎さんが好きです」 「……うん、知ってる」 頬をなぞる右手が、繊細な左手に捕まる。 交わる視線。 そして俺たちは、口づけを交わした。 fin

ともだちにシェアしよう!