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閑話:午後9時のアイスクリーム (4)

時折、スプーンを持つ手同士がふれあいそうになる。 そのたびに佐藤くんの右手が目に入った。 でかい……と思う。 持っているスプーンが子供サイズに見える。 自分の手と見比べると、全然違う。 佐藤くんの手は血管が浮き出ていたり、関節がしっかりていたり、爪の形も四角かったり、とにかく男らしい。 同じ男でもこんなに違うなんて。 そういや、前に飲み会で酔っ払った女の子たちが耳を塞ぎたくなるような下世話な話で盛り上がってたことがあった。 男の手の大きさはアレの大きさと比例する、とかなんとか。 それは本当なのかもしれない。 あー…… 触ってほしい。 この男らしい手で握られたら気持ちいいだろうな。 ああでもきっと力強いその手は、至極優しく俺に触れるんだろう。 物足りなくてつい恥ずかしい言葉を言ってしまいそうなくらいに、繊細に淡くそっと触れてくるはずーー… このやろう今すぐ黙れ俺の煩悩ッ! ……だから。 だからなんでだ! なんで佐藤くんを前にするとこんなに破廉恥なことばっかり考えてしまうんだ。 佐藤くんの身体からフェロモンでも出てるのか? だとすると……もしかして、ソファで並んで食事してるのが原因なんじゃないか? 「神崎さん?」 「えっ?」 「どうしたんですか?すごい考え込んでますけど」 「……」 「神崎さん……?」 近い。 佐藤くんがものすごい近いところから俺を見てる。 切れ長な瞳に俺が映ってる。 心配してくれてるのか、眉が微かに八の字だ。 薄い下唇が鈍く光ってる。 バニラアイスだ。 そのたくましい手で銀色のスプーンを操り、冷たいアイスを口元に運んだに違いない。 いつも俺を追い詰める舌を巧みに動かしてゆっくりと溶かし、ゴクリと飲み込むーー…あ。 ムラムラしてきた。 そうか。 これだったのか。

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