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閑話:午後9時のアイスクリーム (6)
「よかった……ソファにはこぼれてない」
「そんなこと気にしなくても、あっ、ちょ……っん」
ざらざらした舌が、肌の上を這う。
手首を伝っていたバニラアイスをねっとりと舐めとり、乾いた腕に唾液の道を作りながら肘へとゆっくりと下っていく。
背中を下から上へとなにかがじわじわと登っていく。
決して強く掴まれているわけじゃないのに、手首を動かせない。
「佐藤、くん……っ」
「……はい?」
舌を伸ばしたまま、佐藤くんが視線だけで俺を見る。
その瞳にゆらゆらと灯る熱を感じて、思わずコクリと喉が鳴った。
「も、いいから」
「……ほんとに?」
「あ……んっ」
「いいんですか?」
「ちょ、佐藤く……」
「ここ、大きくなってます」
「……あっ」
硬くなって布を押し上げるそれを大きな手のひらがそっと覆う。
躊躇うように少し離れてから、ゆっくりと動き始める。
「やめっ……あっ」
「神崎さん、かわいい」
「なっ……ん、んんっ」
……ああ。
思った通りだ。
佐藤くんの手はすごく男らしい。
それなのに。
すごく優しい。
「神崎さん、直接触っていいですか?」
「えっ、あ、ちょ……ん、ぁっ」
「顔、隠さないで」
「や、だって……っ」
だって。
ーーお前の……なんか、
だめだ。
ーー見たくない。
だめだ!
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