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3-1:午後0時のノイズ (4)
午後0時、今日も俺は真昼の戦場で客をさばく。
「ありがとうございましたー。お次の方どうぞー」
オレンジ色の社員証が視界の端にいくつも入り混んでくるけれど、今日は火曜日だ。
神崎さんが来ないと思うだけで、いつもより殺伐としている気がしてしまう。
「温めますか?」
今朝の神崎さんもかわいかった。
最近は冷えるからか、コーヒーがホットになった。
熱いのを気にしてそーっとカップを受け取るのがかわいい。
ものすごくかわいい。
「スプーンはお付けしますか?」
あ、夜なに食べたいのか聞くの忘れた。
あとでLIMEしてみよう。
返事来るといいんだけれど。
「1000円お預かりします」
そういえば、何を食べたいか聞き続けてそろそろひと月近くになるけれど、カルボナーラをリクエストされたことはまだ一度もない。
週3で食べているくらいだから、大好物なはずなのに。
もしかしたら家では作れないものだと思っているんじゃないだろうか。
神崎さんならあり得る……ものすごくあり得る。
LIMEが既読スルーされたら、今日はカルボナーラにしてみようか。
そうしたら、佐藤くんすごい!って感動して、またムラムラしてくれるかも。
「502円お返しいたします。ありがとうございましたー」
神崎さんの『衝撃のムラムラ☆ハプニング』からそろそろ10日。
相変わらず俺は神崎さんの胃袋を掴んでいるらしく、毎日ふたりでキッチンに立って楽しい夜を過ごしている。
神崎さんもお返しとばかりに笑顔を振りまき、俺の心をがっちりと掴んで離さない。
一緒に料理して、隣同士に座って食べる。
たまにテレビを見て、同じタイミングでツッコんで照れ合う。
唇を吸いあって、舌を絡め合って、抱きしめ合う。
好きな人が一緒にいる。
隣で笑ってくれている。
幸せーーだけれども。
「お次の方どうぞー」
俺の切実な悩み、その3。
神崎さんがやたら煽ってくるのに触らせてくれない。
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