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3-2:午後4時のカウンセリング (1)

「佐藤くん」 「あ、宮下さん」 「店長と藤田さんが戻ったら、あたしたちも休憩入ろっか」 「はい」 夕方になると、いつも神崎さんの家から見たあの夕陽を思い出す。 あれから何度か一緒にあの窓から夕焼けを見た。 いつも途中で神崎さんの横顔にたまらなくなった俺がキスするか、神崎さんがムラムラして俺を押し倒すかのどちらかだったから、日没を最後まで見たことはまだない。 「はぁ……」 「何かあった?」 「え?」 「今日朝からずっとため息吐いてるでしょ」 「あ、すみません……雰囲気、悪くしてますよね」 「そんなことはないけど、なにか悩んでるなら聞くよ?」 宮下さんが、心配そうに俺を見上げてくる。 俺はただ肩をすくめて応えた。 悩んでいるわけじゃない。 ただ、ちょっと寂しいだけだ。 今朝、神崎さんがあまりに普通だったから。

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