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3-2:午後4時のカウンセリング (2)

「えっ、明日?」 神崎さんが、ロールキャベツを頬張りながら目をまん丸にした。 溢れた具が皿に滑り落ちる。 「はい。明日は何食べたいですか?」 口をもごもご動かしながら、神崎さんが斜め上を見る。 「うーん……あ。あー……そうか、そうだった。明日は会えないんだ」 「残業ですか……?」 「水曜日はノー残業デーだからそれはノー……だけど、明日は支社で会議があるから午前中に出て、本社に戻ったらそのまま部の食事会に行く」 「食事会、ですか」 「ん?うん」 飲み会、とは言わないのか。 「聞いてくれてよかった。うっかり言い忘れるところだった」 俺も話してくれて安心した。 噂で聞いたから、とはなんとなく言いづらくて試すような聞き方になってしまったけれど、俺に内緒で行くつもりだったわけじゃないとわかっただけで心が軽くなる。 「あー……昼ごはんも支社で取るから、明日は朝しか会えない、な」 神崎さんの口がへの字になる。 拗ねている。 拗ねるくらいなら飲み会……いや、食事会なんて行かなければいいのに。 俺の作る飯の方が、美味いに決まってる。 あんな神崎さんの顔しか見ていないような女たちよりも、俺と一緒に飲む方が酒だって美味いに決まってる。 だから行かないで。 そう言いたくて、でも……言えない。 ーーいい。ただの生理現象だ。 俺の手を拒絶する時のあの低い声が耳から離れない。 「……佐藤くん」 「えっ?……んっ」 気付いたら神崎さんの顔が至近距離にあって、唇がほんのり温かくなった。 コンソメのいい香りが鼻をくすぐる。 そういえばこの人、さっきコンソメの袋をぶち撒けてたな。 せっかくカルボナーラを作って驚かせてやろうと思ってたのに、こんな時ばっかり即レスで『ろーるきやべつ』とか言ってくるんだもんな。 きやべつってなんだよ。 小文字の打ち方くらい覚えろよ。 この前も教えただろ。 記憶力金魚かよ。 かわいいかよ。 今だって俺の顔を両手で挟んでキスとか、子供かよ。 自分だけ目を閉じやがって……ああもう。 もう。 もうもうもうもうもう……かわいいなこんちくしょうめがっ!

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