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3-2:午後4時のカウンセリング (3)
「……ごめん」
唇が離れるなり、神崎さんが呟く。
「なんで謝るんですか?」
「佐藤くんが悲しそうな顔してるから」
「……してません」
「ふぅん?」
悔しい。
見抜かれた。
しかもニヤニヤ笑われている。
……こんちくしょう。
「佐藤くん、明後日は何食べたい?」
「え、俺ですか?」
「いつも俺が食べたいものばっかりだろ。だから明後日はなにか佐藤くんが食べたいもの……」
「を、俺が自分で作るんですね」
「えっ?あー……うん。そうなる、か?」
神崎さんがしどろもどろになり、視線を彷徨わせる。
途中俺と目が合って、でもすぐに逸らされる。
そして、左手でガシガシと頭を掻いた。
「くそ、かっこつかないな……」
あれ。
もしかして、本気で俺を慰めようとしてくれてたんだろうか。
「……プッ」
「笑うな」
「だって神崎さん、かわいい」
ゆっくりと顔を寄せて、かすめるだけの口づけをする。
唇が離れると、への字口で真っ赤な顔の神崎さんが潤んだ瞳で俺を睨んでいた。
「……で、なにが食べたい?」
ーー神崎さんが食べたいです。
「考えておきます」
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