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3-2:午後4時のカウンセリング (4)
そして今朝、神崎さんはいつものようにコーヒーを買い、いつものように笑顔を振りまき、いつものように丁寧に礼を言って俺の前から去っていった。
また明日ーーなんて残酷な言葉を残して。
「はぁ……」
「またため息吐いてる」
呆れたような声音に振り返ると、宮下さんが立っていた。
手には、四角い白い容器を持っている。
「宮下さん」
「お疲れ様」
「お疲れ様です。またカップラーメンですか」
「残念、今日はカップ焼きそば。佐藤くんこそ、またおにぎり?」
「はい。食べますか?」
「今日の具は何?」
「ロールキャベツの中身です」
「なにそれ美味しそう。ひとつちょうだい」
「どうぞ」
ラップにくるんだおにぎりをひとつスライドさせると、宮下さんは椅子に腰を下ろした。
狭い休憩室で向かい合わせに座り、テーブルにカップ焼きそばをゆっくりと置く。
宮下さんがペリペリと音を立てながら蓋を剥がすと、もくもくと蒸気が立ち上った。
その動きをなんとなく目で追いながら、昨夜神崎さんと作ったロールキャベツの具の残りをふんだんに詰めたおにぎりを頬張る。
美味い。
「それで、どうしたの?」
「何がですか?」
「ため息の理由。無理に話せとは言わないけど」
ふうふうと二度息を吹きかけてから、宮下さんが豪快に焼きそばを頬張る。
いつ見ても宮下さんの麺の食べ方にはグッとくる。
そこらへんの男よりも男らしく一気にすすり、ほとんど噛まずに飲み込む。
そしてあっという間に器を空っぽにしてしまう。
そんな姿を見ていたら、宮下さんなら俺の欲しい答えを見つけてくれるんじゃないかと思えてきた。
「えぇっと、その……友達の話、なんですけど」
「うん」
宮下さんが、クスリと笑う。
「あの、なんというか、どんなにいい雰囲気になっても、恋人が手を、その、身体に、触れさせてくれない……んだそうです」
「へえ。やっぱり恋バナだったか」
「友達の、ですけどね」
「はいはい」
前のめりになる俺を軽くあしらいつつ、宮下さんがおにぎりのラップを解いていく。
そしてひと口かぶりつくと、美味しい、と感嘆の声を上げた。
「その友達って、付き合ってどれくらいなの?」
「そろそろ一ヶ月になります」
「一ヶ月かぁ……可能性は、いくつかあると思うけど」
「はい」
宮下さんのこれまた男らしいおにぎりの食べ方に惚れ惚れしつつ、耳を傾けた。
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