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3-3:午後10時の攻防 (5)
なんだろう。
ものすごく恥ずかしい。
これじゃまるで一緒に近所の公園に向かう小さな子供みたいだ。
「……あの」
「ん?」
「……いえ」
神崎さんは、エレベーターが止まっても手を離してくれなかった。
そのまま長い廊下をスキップするみたいに歩いていく。
冷えていた俺の右手は、すっかりあたたかさを取り戻していた。
「どうぞ」
2905号室の玄関は、今日もいとも簡単に開いた。
家主の神崎さんの背中を追いかけて、俺も扉をすり抜ける。
「お邪魔しま……わっ」
突然、右手を強く引かれ身体が傾いた。
ぐるりと半回転して、下駄箱にドンと背中を打ち付ける。
「いっ……んむっ!?」
一瞬白くなった視界が、すぐに何かに覆われた。
あれ?
なんだ?
なにかやわらかいものが唇に当たっている。
もしかして……キス?
目を閉じるのも忘れて、目の前の光景に見入る。
そこには、うっとりと目を閉じる神崎さんがいた。
長い睫毛が白い頬に微かな陰影を造り出している。
とても綺麗だ。
「ふっ……ぅん……」
触れているだけだった唇が動いて、舌がツ……と俺の下唇をなぞる。
ゆっくりと瞼が押し上げられ、神崎さんと視線がかち合った。
上目遣いで俺を見据えたまま、ほんのり赤い舌を伸ばす。
鈍く光る舌先で上唇に触れられると、背中がゾクゾクした。
見つめ合ったまま、どちらかともなく舌を絡め合う。
ぬちゅぬちゅと音をさせながら、だんだんと激しくなっていく舌の動きに呼吸が震えた。
「あっ……ん、んぅっ……」
繋いだままだった右手を振りほどいて、神崎さんの腰を引き寄せた。
口づけが一気に深くなる。
離れかけた後頭部を抱き寄せると、神崎さんの左手が俺のシャツを掴んだ。
荒くなる呼吸に耐えるように、すがりついてくる。
ーーいじらしい。
神崎さんの呼吸のリズムを意識しながら、あたたかい口内を貪る。
ふわふわする。
気持ちいい。
硬くなった俺のそれと神崎さんのそれが、時折ズボン越しに触れ合う。
触りたい。
神崎さんの腰を支えていた手を、ゆっくりと動かす。
細い腰のラインを撫でてから、そこに辿り着く。
こんもりと膨らんだそこを、優しく掴んだ。
「……んっ!?」
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