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3-3:午後10時の攻防 (11)
「ん、んっ……!?」
髪の毛にまとわりついているやたらと甘い香りだって、きっと、周りにいた誰かのが移っただけだ。
それなのにこんな風に醜く嫉妬しているなんて、そんなの気付かれたら、神崎さんはまた嬉しそうに笑うに決まっている。
子供みたいな笑顔を見せられて、俺は、またなにも言えなくなる。
惚れた方が負け、なんて誰が言ったんだ。
こんなの、最初 から勝負にすらなっていない。
「ふぁっ……ん、ぅ……」
悔しくて。
悔しくて悔しくて悔しくて。
息もできなくなるくらいに、激しく舌を絡めた。
酸欠になってしまえばいい。
空気に喘ぐその身体を全部、俺に預けてしまえばいい。
「んっ……んんんんっ!?」
逃げ回る舌を吸いながら、シャツに手を入れる。
抗議の声を無視して腹筋をなぞると、神崎さんの喉が鳴った。
唾液で潤う唇を解放し、白い首筋に舌を這わせる。
「あっ……ふ、ぅんっ……」
遠ざかろうとする腰を引き寄せ、首筋から耳までのラインをじっくりと味わう。
背中を震わせながら刺激から逃げようとする上半身を腕の中に閉じ込め、ゆっくりと体重をかけた。
「ひゃっ……!」
背中から倒れた神崎さんを包むように、ベッドが大きく沈む。
すぐに起き上がろうとする神崎さんの肩を、両手で押した。
「逃がすかよ、こんちくしょう」
「佐藤くっ……んんっ……」
必死に俺の体を押しのけようとする腕を掴んで、手首をベッドに縫い付ける。
いやいやと頭を振る隙を狙って、首筋にかぶりついた。
「んぁっ……!」
キツく吸うと、太ももに当たる神崎さんのそれが硬度を増す。
足をゆっくりと上下させると、神崎さんの腰が浮いた。
「あっ、やめっ……んむぅっ」
制止の言葉を口づけで塞いで、右手で神崎さんの股間を覆う。
ゆるゆると動かすと、また大きくなった。
「……んっ」
ジーンズのジッパーを下げて、そっと手を入れる。
蒸れた空気がまとわりついてきた。
ボクサーと肌の隙間に指を入れた、瞬間ーー
「んんっ……!」
ガリ、と歯が擦れる音がした。
「……って!」
咄嗟に唇を離すと、下唇がジンジンした。
舌で舐めると、微かに鉄の味がする。
もしかして……噛まれた?
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