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3-4:午後11時の告白 (1)

ベットの上で、神崎さんと向かい合う。 なんとなくふたりとも正座になった。 神崎さんは時折居心地悪そうに窓の外に視線を移しながら、最初の言葉を探しているようだった。 俺は、そんな神崎さんをただ見つめていた。 静かだ。 道路を行き交う車の音も、ここには届かない。 まるで、この部屋だけ夜空にぽっかりと浮かんでいるようだ。 「……ふぅ」 神崎さんが、意を決したように身震いし、ひとつ深く深呼吸した。 「佐藤、くん」 「……はい」 「まずは、その……唇、噛んでごめん」 「いえ……俺も、ガッついてすみませんでした」 「え?あ、いや、それは……うん」 神崎さんが、ぎゅっと膝の上の拳を握りしめる。 「それで、その、理由……だけど」 「やっぱりあるんですね」 「……うん」 そうか。 あるのか、理由。 どうしよう。 急に不安になってきた。 ちゃんと冷静に聞いていられるだろうか。 遊びのつもりだった。 深入りしたくない。 お前なんかに触られたくない。 どれをどんな風に言われても動揺しない自信なんて、これっぽっちもない。 「理由はある……けど、佐藤くんが思ってるようなことじゃ、ない」 「……」 「昔、付き合ってたやつに、言われたこと、があるんだ」 「……」 「お前の感じてる顔なんか見たくない……って」 「……」 「……」 「……は?」 目が、点になった。

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