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3-4:午後11時の告白 (2)

なに言ってんだ、この人。 「なんでそんなこと言うのか、理由は、その、怖くて聞けなかったけど、それ以来……佐藤くん?」 よほど変な顔をしていたのか、神崎さんが一生懸命紡ぎ出していた言葉を飲み込んで俺を覗き込む。 「……あ、ごめんなさい。なんか、ビックリして」 というか、話についていけてないというか。 「えええぇぇっと……神崎さんでも怖いとか、思うんですね」 「そこ!?お前、俺をなんだと思ってるんだ」 「えっと……なんでしょう……?」 とりあえず、何がなんだかわからない。 「あのなあ……仮にも、その、惚れてる相手にそんなこと、言われて、無邪気に『なんで?』なんて聞けるわけない、だろ。もし、感じてる顔が気持ち悪いとか、萎えるとか、言われたら……それこそ、立ち直れない、だろ」 「あ、はい……そう、ですね」 操られるように頷くと、神崎さんが息を吐いた。 何かから解放されてホッと安堵したような、柔らかいため息だ。 そして、正面からジッと俺を見つめてくる。 瞬きもせず鏡のように俺を映す瞳を、そのまま見つめ返す。 でも、神崎さんは口をキュッとすぼめたまま、何も言わない。 「……えっ?」 神崎さんがパチパチと素早く瞬きした。 「えっ、えぇっ!?」 「な、なんだよ」 「もしかして、それが『理由』……ですか?」 「わ、悪いか」 「え?いや、だって、それって昔のことなんですよね?なんで……」 「思い出しちまったんだからしょうがないだろ!」 視線を落として、神崎さんがまたぽつりつりと言葉を紡ぎ始める。 「この間、佐藤くんに、その、触られた時に、急に、思い出して……」 あ、もしかして。 ーーや、めろ……! あの時? 「そしたら、突然、触られるのが……怖く、なった」 「怖い?なんでですか?」 「だ、だって!」 神崎さんが、拳を握りしめた。 俯いたままの肩が、小刻みに震えている。 「神崎さん……?」 「だ、って……もし佐藤くんにも同じように、その、俺の、そういう顔、見たくない、って、思われたらどうしよう、って……」 「……」 「思われて……もう会いたくないとか、言われたら、どうしよう……って……」 「……」 「……」 「……は?」 なに言ってんだ、この人。

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