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3-4:午後11時の告白 (3)
「……も」
「えっ」
「もおおおおおおおおぉぉぉぉぉ……っ」
「さ、佐藤くん?」
まるで触られたら日本が沈没するって勢いで嫌がってじゃないか。
それが、昔の恋人に感じてる顔を見たくないって言われたからだって?
もしかしたら俺も同じように思うかもしれないからだって?
なんだよ。
なんだよなんだよなんだよ。
そんなことだったのかよ!
ああ、わかってる。
神崎さんにとっては決して『そんなこと』じゃ済まないってことくらい。
でも。
でも!
あえてもう一回言ってやる。
そんなことだったのかよ……!
「あ、あの、佐藤くん?だ、大丈夫か……?」
orzスタイルで突っ伏した俺の頭上から、心配そうな声が降ってくる。
……ああ。
はっ倒したい。
今すぐ全力ではっ倒してやりたい。
「……神崎さん」
「な、なに?」
「もしかして、俺に触ってこなかったのもそのせいですか?」
「えっ……?」
「最近、全然ムラムラしてませんでしたよね」
「あ、いや、ムラムラは……してた」
「えっ、してたんですか?」
顔を上げると、頬を紅色に染めた神崎さんと目が合った。
「や、でも、その……我慢、してた」
「……なんで」
「だって、佐藤くんに触ったら絶対、俺も……触ってほしくなる、から」
……あ。
鼻血、出たかも。
「そしたらうっかり油断して恥ずかしいこと言ってしまいそうだったから、必死で我慢、してた」
「……で、毎晩俺が帰ってから自分で抜いてたんですか」
「なっ!?ぬ、抜いてた、とか、シレッと言うなよ!」
「してなかったんですか?」
「あ、や、その……して、た、けど」
「してたのかよ……」
ただの生理現象だとか、すぐに治まるとか散々言っておきながら、全然おさまってなかったんじゃないか、こんちくしょう。
俺の手をあれだけ拒んでおいてちゃっかり自分で抜いてたとか、ふざけんなよ!
「なんで俺がいるのにひとりでしてるんですか」
「だから、それはっ……」
「付き合ってるんだから言えばいいでしょう」
そりゃあ俺だって神崎さんのそういう顔は見てみたい。
でもどうしても嫌だって言うんだったら、見えないようにするとか、いろいろ手段はあったはずだ。
それなのに、何も言わずにただ逃げ回るなんて酷すぎる。
俺がどれだけ悩んでたのかも知らずに。
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