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3-4:午後11時の告白 (5)
静寂に包まれた空気の中、ランプの隣に並ぶみっつの目覚まし時計が競い合うように時を刻む音だけが響く。
俺の腕の中にすっぽりとハマってしまった神崎さんは、すっかり安心した様子で俺に体重を預けていた。
「……神崎さん」
「んー……?」
「もしかして、寝てます?」
「……寝てない、けど」
「眠い?」
「……気持ちいい」
神崎さんが夢見心地で言った。
「えっ……?」
ビックリした。
ビックリしすぎて思わず腕を緩めて神崎さんを見下ろしたら、当の神崎さんもハッと俺を見上げて激しく瞬きしていた。
え?
もしかして、今の完全に無意識……?
「……プッ」
「あ、あー……っと、コ、コーヒー、淹れるの忘れてた」
「ククッ……や、それはもういいですけど、神崎さん」
「な、なに?」
「神崎さんの事情はよくわかりました。話してくれてありがとうございました」
「あ、えと……うん」
「じゃあ、脱いでください」
「……」
「……」
「……はぁ!?」
両肩を思いっきり押すと、背中から倒れた神崎さんが足をじたばたさせた。
「ちょ、おい!今の絶対文脈おかしいだろ!」
「そうですか?」
「そうだ!今の流れだと今日はもう何もしないとこっ……」
「言ったでしょう。俺はしたいんです。神崎さんを舐めたいし、扱きたいし、咥えたい」
「な、なに言っ……」
「神崎さんを食べたい」
「た、食べ……っ!?」
「神崎さんがほしい」
神崎さんが、全身の動きをピタリと止めた。
「さ、佐藤くーー」
「それに、神崎さんだけしていいなんてフェアじゃない」
「だ、だからそれはっ」
「俺は見たいんです。神崎さんが感じてる顔」
「なっ……」
「安心してください。俺は、てめーの顔なんて見たくねー今すぐ失せろ俺の前から消えろ、なんて言いません。それは絶対に自信があります」
「そ、そこまでは言われてな……」
「もう黙って」
「んっ……ふぁっ……」
「俺は、あなたのそのいつも悔しいくらいに綺麗な顔が崩れるところが見たいんです」
「っふ……ん、ぅ……」
「だから……」
「あっ……!」
「見せてくださいーー俺だけに」
耳元で囁くと、神崎さんの身体がビクッと跳ねた。
俺の袖を掴む神崎さんの手は震えていた。
でも、確かに聞こえた。
ーーかってに、しろ。
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