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3-4:午後11時の告白 (10)

暗い部屋の中に、理人さんの荒い息遣いと、俺の口の端から漏れるいらやしい音だけが響く。 「……っぁ、ふっ……っく……」 頭を優しく撫でていたはずの指には力が込もり、繊細な長い指に俺の髪が絡む。 「あっ……そこ、はっ……んんっ……」 やめて。 むり。 はなして。 こわい。 合間に混じっていたそんな言葉たちも、いつの間にか聞こえなくなった。 「あっぁっ……はっ、ぁ……んっ……」 今なら分かる。 神崎さんが昔の恋人に『感じてる顔を見せるな』って言われた理由。 半開きの口。 上気した頬。 うっすらとヴェールのかかった瞳。 震える上半身。 揺れる腰。 舌の動きに合わせて跳ねる身体。 きゅっと力のこもった足。 透明な液体を溢れさせるトロトロのそれ。 普段の理人さんからは想像できない乱れた姿。 許された者だけが見られる特別な姿。 そんな姿(もの)ばかり見せられたら、もうーー止まらなくなる。 「あっ……あっぁっ……あっ……」 不思議だ。 男のものを咥えるのは初めてなのに全然嫌じゃない。 まるでこうするのが当然の流れだったかのようだ。 舌の上を這う微かな苦味も。 男くさい匂いも。 すべてが愛おしい。 この人が俺の口の中でイクのが、ただただ待ち遠しい。 「んっ……んんぅっ……」 口をすぼめて先端を吸うと、理人さんの膝がガクガクと揺れた。 「佐藤く……んっ」 「……なんれすか」 「ぅあっ……も、いいから止め……っ」 理人さんがぎゅっと目を瞑ったまま、いやいやと首を振る。 その仕草は本当にかわいい。 今すぐキスしたいくらいにはかわいい。 でもまさか。 今さら離してなんてやるわけーーない。 「いやれす。このままイッれくらはい」 「バッ、そのまましゃべる、なぁっ……っん、んんっ、あ、ぁっ」 頭を押さえる手にぐっと力が込もり、理人さんの身体が大きく震えた。 と同時に、口の中で熱いものが一気に弾ける。 ドクドクと吐き出されるそれを、すべて口で受け止める。 コクリと喉を鳴らすと、なんとも言えない味が舌の上に広がった。 ゆっくりと喉を下っていくそれは、想像していたよりも濃い。

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