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閑話:午前0時のインビテーション (6)

「たくっ……まあ、それまでももしかしたら、とは思ってたけどずっと認められなくて……でも、よく考えたら初恋も男だった」 「初恋?」 「幼稚園バスの運転手さん」 「プッ、ありがちですね」 「だろ?」 「じゃあ、女性と付き合ったことはな……」 「あるよ」 「えっ、あるんですか?」 「言っただろ。しばらく認められなかったって」 「……」 「最初はいろいろ葛藤してたから、女の子から告白されても嫌いじゃなければ付き合って……いつもフラれてたよ」 女の子にフラれるのは、いつも決まって付き合って三ヶ月が過ぎる頃だった。 そして、その言葉は決まっていた。 ーー私のこと好きじゃないくせに。 それがまさに当たっていたから反論できなくて、でもそれがさらに相手を傷つけてたなんて、当時は分かっていなかった。 何回かビンタをくらったりもしたけど、それでその子の気が済むならいくらでも、なんて思ってもいた。 「とっかえひっかえですか?よく刺されませんでしたね」 「……そういう佐藤くんはどうなんだよ」 「俺ですか?」 「ぼろぼろ涙流して泣くオッサンに興奮して感じるとか、とても男相手にするの初めてって感じじゃなかったけど?」 「オッサンって言うのやめてください。理人さんがオッサンなら、世界中の全オッサンが泣いちゃいますよ」 「なんだそれ」 一緒に笑ってから、佐藤くんが、ふと表情を引き締める。 「俺は、そもそもこんな風に誰かのことを好きだって思ったのは理人さんが初めてです」 「あ、そ、そう、か」 ……なにこいつ。 なにこいつ! そんな恥ずかしいこと、よく真顔で言えるな……! 「俺も何度か女の子と付き合いましたし、セックスもしましたけど」 「セッ……!?」 「今夜が今までで一番気持ちよかったです」 「そ、れはよかった……な」 だからそんなこと真顔でシレっと言うなよ! 恥ずかしいやつ恥ずかしいやつ恥ずかしいやつ! 「プッ……ククッ……」 「な、なに?」 「理人さん、顔真っ赤。それに……」 「な、なんだよ!?」 「勃ってる」 「え……?」

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