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閑話:午前0時のインビテーション (7)

えぇっ、う、嘘だろ!? いい加減にしてくれ、俺の煩悩! 今の話のどこでおっ勃てるポイントがあったんだよッ! 「ちょ、待っ、さ、さわんな……っ」 当然のように伸びてきた佐藤くんの手を慌てて押しとどめた。 「なんでですか?さっき俺としてたこと思い出しててこんなになったんでしょ?だったら責任持って俺が……」 「こ、こんなの生理現象だって言ってるだろ!」 「……」 「あ、え?さ、佐藤くん?」 佐藤くんが、急に押し黙った。 しかも、ものすごく顔をしかめている。 目も、細めている。 あ、あれ? なんだ? 怒らせた……か? 「ふぅ……言っときますけど」 「な、なに?」 「これからはそんな言い訳、俺、一切聞いてあげませんからね」 「は……?」 「理人さんがどれだけ拒んでも泣いても喚いても、やめませんから」 「……っ」 ゾクリ。 背中が泡立った。 これだ。 この瞳だ。 飢えた肉食動物(ハイエナ)の瞳。 この瞳が俺はどうしようもなくーー 「じゃあ、コーヒーとその他いろいろ、ごちそうさまでした」 「なっ、その他いろいろってっ……あ、帰る、のか?」 「えっ……?」 え? あ、あれ? ちょ、おい! 引き止めてどうする……! 「あ、いや、じゃあ、駅まで送っ……」 「理人さん」 「な、んだよ」 「俺、帰らなくてもいいんですか……?」 ……ああくそ。 そんな期待丸出しの声で、言うな。 「あ、あー……」 「理人さん……?」 「や、だって、もう、こんな時間だし」 「……」 「走っても、終電、間に合わないかも、だし」 「……」 「明日どうせ行き先同じ、だし」 「……」 「歯ブラシの予備もある、し」 俺、なに言ってるんだ? ひと言、帰るなって言えばいいだけだ。 泊まってけ、って言えばいいだけだ。 それなのに。 こんな言い訳みたいなことばっかり。 「パジャマもある、し。佐藤くんには小さいかもしれないけっ」 最後まで、言えなかった。

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