147 / 492

4-1:午前9時のシャワールーム (1)

ふいに、理人さんがもぞもぞ動いた。 スマホを置いて腕の中を覗き込むと、瞼が小さく震えている。 やがてゆっくりと瞼が持ち上がり、長いまつ毛が二、三度上下した。 頭を撫でると、色素の薄い髪が指にからまってくる。 理人さんはくすぐったそうに身をよじって、暖を求めるように身体をすり寄せてきた。 自分の口角が上がるのを感じる。 そっと抱きしめると、目が開いた。 「……ん」 トロンと眠そうな瞳が何度か瞬き、俺の姿をとらえる。 と、とたんに頬が桃色に染まった。 一緒に朝を迎えるのは初めてじゃないのに、いつも変わらない反応に愛おしさが募る。 手の甲で頬を撫でると、理人さんがうっとりと目を細めた。 「おはようございます」 「……おはよう」 「もう起きますか?」 「……」 「理人さん?」 理人さんが、瞳を閉じたまま眉間にしわを寄せる。 「……ん、あー……いま、なんじ?」 「6時18ぷ……」 「まだねる」 「やっぱり」 布団に潜り直してしまった理人さんを、上からポンポンする。 すぐに気持ち良さそうな寝息が聞こえてきて、俺はクスリと笑いを漏らした。 やっぱり、朝の理人さんはたまらなくかわいい。

ともだちにシェアしよう!