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4-1:午前9時のシャワールーム (2)
だんだんと空が白み始め、それに合わせて部屋の中にあるものの輪郭が濃くなっていく。
枕元にある目覚まし時計は、3つとも7時ちょうどを指していた。
理人さんを起こさないように頭の下にある腕をそっと抜き取り、音を立てないようにベッドを抜け出す。
ホッと息をひとつ吐いたところで、くん、とパジャマが突っ張った。
「理人さん?」
「……どこ、いくの」
「ちょっと走ってきます」
「んー……そと?」
「はい」
「……かぎ、かばん」
「借りますね」
「……んー」
理人さんが、目を閉じたままコクリと頷く。
俺は少し笑ってから、顔を近付けた。
「……っん」
ちゅ、と小さな音を立てて、唇が離れる。
理人さんは、目を閉じたまま寝返りを打って俺に背を向けた。
「……あさっぱらからはずかしいやつ」
消えそうな声で悪態を吐く理人さんは、首まで真っ赤だ。
?が緩むのを自覚しながら、あちこちにハネた理人さんの髪を手でかき乱す。
すると、すぐに手を捕らえられ、早く行けと言わんばかりにポイっと投げられた。
そのままもぞもぞと布団に潜り込んでしまった理人さんを、布団の上からそっと抱きしめる。
「じゃあ、ちょっと行ってきます」
「……いってらっしゃい」
ためらいがちに紡がれた言葉に、俺はひとり笑みを零した。
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